雪のモスクワ空港、日本の僕がとらわれているもの

目が覚めて外を見るとぼたん雪が舞っていた。17時にモスクワ空港に着いたときはまだ降っていなかったから、夜中に降り始めたようだった。着いたときには既に真っ暗だったけど、朝の7:30に飛行機が出たときもまだ真っ暗。

寝袋にくるまって、9時間熟睡した。敷き布団がわりの借りたブランケット、お気に入りのシュラフ、アイマスクにマスクに耳栓。ダウンジャケットを詰めたデイパックを枕にして、盗られるものは何もない。体を折って椅子で寝ている人、床に座り込んでいる人、せわしなく通り過ぎる人。床に寝転がっているのは僕だけだった。

リラックスして寝れたことに少し嬉しくなる。「こう振る舞わなきゃいけない」という価値観の束縛から、自分が自由になっていくのを感じる。日本でできないことができるようになるのは、旅の醍醐味の一つだ。ちょっと背中は痛いけど、少し体が軽くなる。

東京にずっといると、自分の体に染み込んでいる価値観に無自覚になってしまう。「こう振る舞うべき」というルールがばっちり体に染み付いていて、外に出なければそれが不自由だったことにも気づかない。

エスカレーターでは片側に立つ。まともな大人は街を歩きながら歌ったりスキップしちゃいけない。電車では静かにする(赤ちゃんですら大声を出すのを許されない!)。

自分がどういう価値観に囚われているのか、いつも注意深くありたい。会社までスキップして行く人とか、電車で泣いてる赤ちゃんに話しかけるひととか、新橋駅で『ラ・ラ・ランド』を踊る人とか、そういう人が増えれば、きっと日本はもっと住みやすくなると思うのだ。