額縁に入れて飾った絵の、続きを描くことはできない

懐かしい町に久しぶりに来て、
暮らしていたアパートの階段や、よく遊んだ公園のベンチに腰かけた。

階段の手すりの錆びや、遊具が風に揺れて軋む音のような、幼いころには注意を寄せさえしなかったものが、僕のからだのどこかに蓄えられているのを知る。

瓶の底に沈む果実酒のおりを静かに撹拌するみたいに、ベンチに座って公園を眺めるだけで、そこで過ごした時間と、目の前の時間とが混ざり合っていく。

僕らはあの夏の静かな夜に包まれながら気づく。その空間は、確かな意思で僕らを愛してくれていたと。

一緒に歌った歌が聞こえる。
語り終えた物語、描き上げた絵、固く栓をしたボトル。

額縁に入れて飾ってしまった絵の、続きを描くことはできない。