花に嵐の例えもあるぞ

91歳のじいちゃんが死んだ。
子や孫に看取られながら、苦しまずに安らかに逝った。
念願だった大相撲の高崎巡業を観に行って、その翌日に意識を失ってあっという間に逝ってしまった。
誰にも迷惑をかけず、それでいて看取る時間をとらせてくれる。堅実で優しいおじいちゃんらしい死に際だった。
農家の長男に生まれて、酒もタバコもやらない、無口で無愛想な働き者。
20歳で兵隊に取られて、海軍で駆逐艦に乗っていたときのことをよく話してもらった。瀬戸内での対空戦が唯一の戦闘で、戦争を生き延びた数少ない艦艇の一つ。広島に原爆が落ちて、呉の軍港で被爆した。きのこ雲がよく見えた。
当事者が死んで一つの時代が終わる。
革命でも、終戦でもなく、時代が終わるのはその時代を生きた者が死んだときだ。
病床でおばあちゃんが「今までありがとうね。お世話になったね。苦しくないかい。ありがとうね」と繰り返していたのが、とても素朴で、とても素適だった。あとは任せてね。おじいちゃんありがとう。